住宅ローンを使うには、お金を貸してくれる金融機関の審査を通過する必要があります。
その審査では、特に「勤続年数」という項目が大切にされます。
なぜなら、金融機関は「住宅ローンの返済が滞る可能性はあるか」ということを判断するため、勤続年数を見て収入の安定性を評価しているからです。
普通は、勤続年数が長ければ収入が安定している傾向があると言われています。
住宅ローンを組むタイミングや転職するタイミングは慎重に考えるべき
次のような場合、転職直後に住宅ローンを組みにくくなる可能性があります。
ケース1:仕事を頻繁に変えている場合 (理由)収入が不安定だと判断されるため
ケース2:住宅ローンの融資条件が2〜3年の勤続年数を求められている場合 (理由)転職直後では条件を満たせないから 住宅ローンの審査では、収入の安定性が重要視される傾向があります。
金融機関は、転職した直後の人について「またすぐに辞めてしまうリスクがあるかもしれない」と考えます。
だから、金融機関は審査の際にマイナスの要素を考慮するのです。
そのため、転職直後は住宅ローンを組むのが難しいとされています。
また、転職直後の場合、最近の1ヶ月の収入だけを元に年収が計算されます。
つまり、ボーナスがあっても反映されません。
それに対して、勤続年数が1年以上ある場合と比べると、審査の基準となる年収が低く算出されてしまう点に注意が必要です。
なぜなら、年収が低いと返済能力が低いと判断され、借りられる金額も少なくなってしまうからです。
転職を考えている方には、転職後すぐに住宅ローンの審査を受けるのではなく、まずは頭金を貯める期間を設けることをおすすめします。
この期間は、新しい職場での安定した収入が得られている状態で、頭金をしっかりと蓄えるための時間を確保できます。
頭金が貯まるころには、仕事も落ち着いてきていることでしょう。
そのため、将来の資金計画を立てやすくなるでしょう。
新しい職場での収入が安定していることから、現在の収入と将来の支出を見据えて、住宅ローンの契約に臨むことができます。
これにより、理想的な状況で住宅ローンを組むことが可能となります。
転職直後の場合、一般的には住宅ローンを組むことは難しい
転職した理由が収入の増加を目指すためである場合など、住宅ローンの審査に通ることもあります。
転職直後には、職歴書の提出が求められることがあります。
その際には、ヘッドハンティングや同じ業界への転職など、収入面に利益をもたらす要素があると、転職歴が多くても審査にプラスに働くことがあります。
特に、グループ会社間での転籍や出向の場合は、転職ではなく人事異動と見なされることがあります。
同じ業界でキャリアを積んで昇進している場合も、住宅ローンの審査には不利にはなりません。
ただし、それを実現するためには、キャリアが一貫性を持ち、計画的に転職を選んでいるということが重要です。
また、勤続年数の基準を設けていない金融機関もありますので、そういった機関に申し込むことで住宅ローンの利用が可能となる可能性もあります。
逆に、退職理由などを明確に説明できない場合は、将来の収入の安定が危ぶまれ、金融機関から審査に不利な判断を受けることになります。
住宅ローンは長期にわたって返済する制度なので、職歴書の提出が求められた場合には、キャリアアップのための転職であることなど、プラス面を積極的にアピールすることが重要です。
また、十分な頭金を用意したり、万が一の場合に備えて返済を続けられる貯蓄を持っていることも、審査に有利に働きます。
配偶者の収入で返済できるか、転職先の会社が信頼できるかなど、金融機関が納得できる条件を整えることが賢明です。
住宅ローンを転職直後に申し込む場合の方法
勤続年数の要件がない金融機関の住宅ローンに申し込むことを考えてみましょう。
申込条件は金融機関によって異なりますが、中には年収や勤続年数の基準を設けていない金融機関もあります。
例えば、みずほ銀行や三井住友銀行では、申込条件に年収や勤続年数の基準は設けられていません。
また、ソニー銀行では年収の基準はあるものの、勤続年数の制約はありません。
これらの金融機関を探して申し込むことにより、転職直後でも住宅ローンを組むことができる可能性が高くなります。
別の対処法として、フラット35の利用を考えてみましょう。
フラット35は、申し込み時の年齢が満70歳未満であることと日本国籍であることが主な要件です。
収入や勤続年数は要件には含まれていません。
フラット35は物件の審査を重視しているため、民間の金融機関と比べて申込条件が緩やかに設定されています。
そのため、転職直後でも申し込むことができます。
さらに、頭金を準備することも考えてみましょう。
転職直後でも、頭金としてまとまった資金を用意することで、審査に通過する可能性が高まります。
もちろん、申込条件を満たす必要がありますが、頭金を用意することで借入金額を減らし、返済負担を抑えることもできます。
また、勤続年数の要件を満たすまで待つという選択肢もあります。
一般的に、金融機関の勤続年数の要件は2年以上または3年以上となっています。
転職直後でも、一定の期間を勤務してから住宅ローンを申し込むことにより、金融機関の要件を満たすことができます。
いずれの対処法を選ぶにしても、まずは各金融機関の申込条件を確認し、自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
勤続年数の条件を満たしていない場合、焦って物件を購入するのではなく、条件を満たせるまで待つという選択肢があります。
自己資金を貯めて頭金を用意することにより、審査に通りやすくなるでしょう。
したがって、条件を満たせない段階では「今は購入するタイミングではない」と考え方を変えることも重要です。
転職前に住宅ローンの契約を考える
転職直後は、住宅ローンの審査が通りにくくなるので、転職前に住宅ローンの契約を考える人もいるかもしれません。
確かに、転職前で勤続年数が長い場合などは、審査が通りやすくなることがあります。
しかし、その場合に注意が必要です。
転職が決まっている状態で住宅ローンを組む場合は、融資実行や物件の引き渡しのタイミングも前職に在籍している必要があります。
特に、新築マンションや注文住宅を購入する場合は、住宅ローンの審査から融資実行までの期間が長いため、注意が必要です。
さらに、転職前に住宅ローンを組む場合には、転職前と転職後の収入の差にも注意が必要です。
転職によって年収が増える場合は、住宅ローンの返済が問題なく行えますが、年収が減ってしまう場合は返済が滞る可能性があります。
例えば、転職後の手当がなくなり、手取り額が減少した場合や、年収は変わらないが賞与の割合が高く、毎月の収入が転職前よりも減った場合などが考えられます。
これらのケースは、転職してみないと気づかないことも多く、後悔することになります。
そして、収入の減少によって毎月の返済額が家計を圧迫する可能性もあります。
住宅ローンの返済ができなくならないようにするためにも、転職後の収入条件を考慮し、無理のない返済計画を立てることが重要です。
また、住宅ローンの審査中に転職などをする場合は、勤続年数や収入の内容が変わるため、審査結果に影響が出る可能性があります。
住宅ローンの審査中や融資実行直後に転職することは避け、返済が始まって数カ月程度の余裕をもって転職することが賢明です。
転職前に住宅ローンを組むメリット・デメリット
転職前に住宅ローンを組むメリットは、融資を受けやすいということです。
つまり、現在の雇用状態や収入に基づいて、銀行や金融機関から必要な資金を借りることができます。
これにより、住宅を購入するための資金を手に入れることができます。
一方で、転職前に住宅ローンを組むことにはデメリットもあります。
例えば、転職後に収入が減ってしまったり、すぐに離職してしまったり、転職先の会社とトラブルが発生してしまう可能性があります。
転職後に収入が減少する可能性はあるため、新しい職場での給与水準や待遇を注意深く考慮する必要があります。
また、新しい会社が自分に合っているかどうかを判断するのは困難です。
そして、転職後にすぐに離職するケースもあります。
このようなデメリットを考慮して、単に融資が受けやすいという理由だけで転職前に住宅ローンを組むのではなく、新しい職場で数年間勤務した後に住宅ローンを組む選択肢も検討するべきです。
また、住宅ローンの審査には時間がかかることも覚えておきましょう。
一般的に、事前審査には3〜4営業日、本審査には約1週間ほどかかります。
さらに、場合によっては合計で1カ月を要することもあります。
したがって、審査中に転職する場合も考えられます。
その場合、新しい勤務先でも再度審査を受ける必要があるため、審査結果が出る前に転職することは避けた方が無難です。
転職した場合、新しい会社には住宅ローンのことを報告する必要があります。
返済中に金融機関から会社に連絡が入る可能性もあるため、事前に報告しておくことが重要です。
報告を怠ると、トラブルが起こる可能性もあります。
転職を秘密にしたいという理由で報告を怠るのは避けるべきです。
なぜなら、住宅ローンは長期的な返済を必要とするものであり、金融機関との長期的な関係を築くことになるからです。
もし審査時に提出した情報に変更があった場合は、できるだけ早く報告するようにしましょう。
毎月の返済が滞ることなく行われていれば、転職による問題は無し
毎月の返済が滞ることなく行われていれば、転職による問題はありません。
ただし、住宅ローン控除を利用している場合、手続きが必要になります。
住宅ローン控除を利用していて、かつ住宅ローンの返済中である場合、手続きが必要です。
例えば、年度の途中で転職し、年末まで転職先で勤務した場合、年末調整の対象となるため、手続きは転職先で行います。
この場合、所得税額は前職と転職先の収入を合算したものになるため、転職先には前職の「源泉徴収票」を提出する必要があります。
手続きとしては、初年度は確定申告を行い、2年目以降は勤務先で年末調整をしてもらうのが基本です。
年末調整による住宅ローン控除を受けるためには、以下の3つの書類が必要です。
税務署から送付される「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」(以下、「控除申告書」とします)、金融機関から交付される「住宅ローンの残高証明書」、そして「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」(以下、「控除証明書」とします)。
この「3」の控除証明書は1枚しか必要ありませんので、2年目の年末調整時には、すでに前職の勤務先に提出しているかもしれません。
ここで注目すべきなのは、これらの書類は平成22年以前に住宅を購入した人が提出する必要がある書類であるということです。
つまり、平成22年以前から住宅ローン控除対象の住居に住んでいる人が転職した場合、前職に「3」の控除証明書をすでに提出しているため、再び転職先に提出しなければなりません。
その場合は、税務署に再発行の申請を行う必要がありますが、手続きは簡単です。
単に、「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書」を作成し、自分が住んでいる地域の税務署に持参または郵送するだけです。
必要な書類には、印鑑と身分確認書が含まれます。
郵送を利用する場合には、返信用封筒に自宅の住所を記載し、切手を貼る必要があります。
この手続きを完了させた後、再発行された控除証明書と「1」と「2」の書類を転職先に提出すれば、引き続き住宅ローン控除を受けることができます。
さらに、平成23年以降に住宅を購入した場合、必要な書類は「1」と「3」のセットとなっており、確定申告をした翌年度に税務署から送付されます。
転職する場合には、未使用の控除証明書兼申告書を転職先に提出することで、年末調整を行うことができます。
転職したら収入が減った。対処法!
借り入れをしている金融機関に相談することで、返済期間を延長したり、月々の支払い額を一定期間減らしたりすることが可能です。
もし収入が減ってしまった場合は、以下の方法を試してみましょう。
例えば、住宅ローンを組んだ際に「ボーナス返済」の選択肢を選んでいる場合、会社の事情でボーナスが出なくなったり少なくなったりした場合は、ボーナス返済額を減らすか、もしくはボーナスの代わりに毎月の返済額を上乗せする方法を選ぶことが良いです。
ボーナス返済は、上手に活用することで総返済額を大幅に減らすことができる一方、ボーナスが見込めない状況ではあまり賢明ではありません。
もし新たに住宅ローンを検討している場合は、ボーナス返済に頼らず、毎月の返済額や利率などの条件を考慮し、内容を検討しましょう。
もし転職によって収入が減ってしまった場合で、自己資金が手元にある場合は、繰り上げ返済を行うことで毎月の返済額の負担を軽減することができます。
繰り上げ返済をすることで、元金分の返済額が少なくなり、その結果利子も少なくなり、返済期間が短くなる効果が期待できます。
繰り上げ返済を行うと手元資金が減るというデメリットはありますが、収入が減っている場合は当面の生活費を確保する意味でも一定の効果があります。
もし転職によって年収が減り、さらに繰り上げ返済が難しくなってしまった場合は、住宅ローンの返済期間を延長する方法が考えられます。
ただし、利用している金融機関によっては返済期間の延長ができない場合もありますが、借入時と状況が変わったことを考慮し、金融機関が残りのローン返済額を考慮した上で、返済期間を延ばしてもらえる可能性があります。
デメリットとしては、返済期間が長くなることによって、利息の負担も増えるため、総返済額が増加することです。
しかし、毎月の返済額が少なくなれば、生活の負担も軽減されます。